皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?
土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
「そろそろマイホームを建てよう」と思い立ち、住宅展示場や不動産サイトを見始めたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「土地選び」です。
間取りやデザインよりも、実はこの“土地選び”の段階で一生の資産価値が大きく左右されることをご存じでしょうか。
今日は、私達が日々の現場で目にする「土地選びの落とし穴」と「注意すべきポイント」を、土地家屋調査士の視点からお伝えします。
落とし穴① 「境界があいまいな土地」
実は、土地のトラブルで多いのは「境界線」をめぐるものです。中でも多いのが、「隣地との境界が確定していない」ケースです。
購入時には気づかず、家を建てたりフェンスを設置したりする段階になって、ようやく問題が発覚する、、、、そんなご相談を、私は何度も受けてきました。
例えば、実際の話ですが、あるご家族は中古住宅付きの土地を購入し、解体後に新築を予定していました。
ところが、いざ境界付近の外構工事を始めようとしたところ、隣家の方が「そのブロック塀はうちの敷地内に入っている」と主張されました。
当職に依頼が来て調べてみると、登記上の境界と実際の塀の位置が約1mずれていた事が判明し、結果的に建築計画を大幅に見直すことになりました。
原因は、前の所有者が依頼した業者さんが「測量や図面確認をせずに、境界を勘違いしてブロック塀を築造した」ことでした。
重要なのは、「登記された地積測量図」や「国土調査(地籍調査)や法務局地図作成や区画整理の成果図面」もしくは「筆界確認書付きの測量図」等が存在するかどうかです。
これらは、土地家屋調査士等が隣接地所有者立会いのもとで確認した境界を示す書類であり、信頼できる根拠となります。
(上記は作成された年代により、現地復元性の高さが異なりますので注意は必要です。)
また、現地に“境界標(コンクリート杭や金属プレートなど)”がすべて設置されているかも大切なチェックポイントです。
杭が抜けていたり、古い分譲地で境界標がどこにあるか分からなかったりする場合は、復元測量などの測量をしておいた方がよいと思います。
また、売買の前に「境界の復元や境界確定測量を条件に契約する」という方法もあります。これは、測量して境界復元の上、または面積や境界が確定した上で正式に引き渡すというもので、買主さんにとって非常に安全な手段です。
土地は“目に見える形”で存在しますが、法的な線引きは“目に見えない線”です。通常は目に見える形(現況)と目に見えない線(登記上、公法上の境界=筆界)は一致しますが、その違いを見つけ出すのが、私たち土地家屋調査士の仕事です。
境界トラブルは、購入後に発覚すると「隣地との関係が悪化する」「建築計画が遅れる」「売却時に価値が下がる」など、長期的なリスクに発展します。
マイホームは一生に一度の大きな買い物。
現地のブロック塀の線だけで安心せず、実際の杭や書類・図面を確認する、、、、そのひと手間が、安心と資産価値を守る鍵になります。
落とし穴② 「登記簿と現地のズレ」
登記簿上の面積(公簿面積)と、実際の実測面積が一致しないケースも多く見られます。一言で測量と言っても、先述の信頼に足る図面を作成する際にする測量もあれば、隣地立会、法務局調査を経ずに現地の構造物だけを測量して、求積している現況図(仮測量図)や民民立会はしているものの官民立会はしていない図面もあります。その現況図等で例えば面積が60坪ありますよと言われても登記簿が50坪の場合、地積更正登記を行わなければ正しい面積とは言えないため、金融機関の融資に影響を及ばしたりしますので、注意が必要です。
落とし穴③ 「再建築不可の接道条件」
建築基準法上、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければ家を建てられません。(特例も存在します)
見た目には2mあっても境界確認をするとそうではない場合も考えられますので、隣地の立会、測量を行い確実にその寸法を満たしているかを確認する事が重要です。このような測量は実務でもよく依頼されます。
まとめ
土地選びの最大の落とし穴は、“境界”があいまいなまま購入してしまうこと。
見た目の広さや立地よりも、まずは法的な「線」を確認することが大切です。
もし迷ったら、ぜひお近くの土地家屋調査士へご相談ください。
トラブルを未然に防ぎ、安心して家づくりを始めるための第一歩になります。




