こんにちは。
税理士の榎野と申します。
今回は税務調査にスポットをあててみたいと思います。
令和4年12月に国税庁から公表された令和3年の相続税の調査状況をみると、実地調査件数が令和2年から123.7%となっています。
参照:国税庁 「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」
今まではコロナ禍で税務調査も少なかったのですが、令和5年5月8日にコロナが5類となったことから今後は税務調査が更に増えると思われますので是非ご覧ください。
1 税務調査とは
相続税の税務調査は、申告が正しく行われているかを税務署がチェックするものです。そのため税務調査で申告漏れや計算間違い、財産を隠していた等が指摘されると本来納めるべき相続税とは別にペナルティ(追徴課税)が課せられます。
このほか、税務調査の対象となる可能性として、申告の必要があるにも関わらず申告を行わなかった場合が考えられます。
2 税務調査の対象になりやすいケース
相続税の申告を行った全ての方が税務調査の対象にはなるわけではありませんが、調査対象になりやすい6つのケースを紹介します。
①申告をしていない場合・・・相続財産が相続税を申告するライン(基礎控除)以下であっても正しく財産を把握しておらず、実際には基礎控除を超えている場合。申告をすることで適用できる税額軽減や特例を考慮すると相続税は0円となるが、申告書を提出していない場合などが考えられます。また、意図的に申告しなかった場合には悪質とみなされ重いペナルティが課されることがあります。
②税理士ではなく相続人ご自身で申告をした場合・・・相続税の申告は税理士に依頼しなくとも相続人ご自身で行う事は可能です。しかし、相続税の申告には専門的な知識が必要なため、税理士の署名がない申告書については、税務署はその内容を厳しくチェックします。
③多額な預金の引き出しや、相続直前の引き出しが多い場合・・・多額な預金の引き出しや振込の中で相続人に対する贈与があった場合には生前贈与加算((相続開始時より過去3年以内(税制改正により最大7年まで延長されます))として相続税の対象となります。また使途不明な多額な預金の引き出しがあった場合にはタンス預金や購入財産の申告漏れが疑われます。そして、相続開始直前の預金の引き出しがある場合には相続開始時に手許に現金が残っていたのではないかと疑われる場合があります。
④遺産総額が多額な場合・・・遺産総額が1億円を超える富裕層の申告は、税務署側は申告漏れや記載内容について厳しくチェックします。
⑤生前の収入が多いが相続税申告の財産金額が少ない場合・・・生前に収入が多いが相続財産が少ない場合には、家族が把握していない財産や意図的に申告していない財産があるのではないかと疑われる場合があります。
⑥多額な借入金があるが、それに対する資産がない場合・・・多額な借入金に対応する不動産や車、その他の資産等の申告がなければ、申告漏れとして指摘される可能性があります。
上記以外にも税務調査の対象になりやすいケースはたくさんあります。正しい財産の把握と正しい申告を心がけましょう。
3 税務調査の連絡がきたら
相続税の税務調査の対象となった場合、その連絡の多くは相続があった年の翌年もしくは2年後の夏から秋にかけてあります(もちろん3年後以降の調査もあります)。
税務調査は多くの場合、税務署から申告した税理士に連絡が来ます。そして、相続人と税理士と税務署とで日程調整を行って、調査日を決定します。
調査日前には税理士と十分な打ち合わせを行うことが重要です。税理士が事前に把握していない事項があると、調査当日の対応が難しくなるからです。
4 税務調査が入らないためにすべきこと
税務調査となり申告漏れ等が指摘された場合には、ペナルティ(追徴課税)が課され、また時間も拘束され、精神的な負担も多くなります。
税務調査は完全に回避することはできませんが、少しでも調査対象にならないように以下のことを心がけましょう。
①正しい申告を行う
②被相続人が、家族のために生前に財産の内容を記載しておく。もしくは、相続人となる配偶者や子供が財産を把握しておく
③銀行の入出金の内容を通帳に記載しておく(多額の入出金に不明点が無いように)
④生前に贈与を行った場合には、その証拠を残しておく
⑤相続税申告の実績が豊富な税理士に依頼する
5 最後に
先程もお伝えしましたが、税務調査を完全に回避することはできません。しかし、その確率を減らすことはできます。
仮に税務調査となった場合でも財産を正しく把握し、正しい申告ができていれば必要以上に不安に思う事はありません。そして伝えていなかった不安なことがあれば税理士にそのことを伝えましょう。