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生命保険金と相続

2015.07.01

1.生命保険金と相続財産

(1)相続が生じた際、生命保険金の受取人として、「死亡した被保険者以外の人」が受取人として指定されている場合、その生命保険金はその受取人の固有の権利となるので、相続の対象にならず、そのまま受取人がもらえます。
最高裁昭和40年2月2日判決も、「保険金受取人としてその請求発生当時の相続人たるべき個人を特に指定した場合には、右請求権は、保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱しているものといわねばならない。」と判示し、生命保険金は、相続財産でなく、固有の権利と判断しています。

(2)「相続人」が受取人として指定されている場合、相続としてではなく、保険契約に基づき相続人各自が保険金請求権を取得します。相続人のなかに相続放棄をした者がいたとしても、影響はありません。
相続人が保険金を受け取る割合は、相続人が平等の割合で取得するという考えと、法定相続分に応じて分割という考え方など諸説があります。保険会社の約款で定められている場合には、その約款に従うことになります。保険会社が定める約款の多くは、均等の割合で受け取るとしている約款が多いとされていますが、約款を確認する必要があります。

(3)受取人が被相続人自身の場合は、当然相続財産として遺産分割されることになります。
 

2.生命保険金と特別受益

(1)生命保険金が、相続財産とは別個の固有権として、受取人が受け取る場合でも、例外的に多額の生命保険金の受領によって、特別受益の問題が生じる場合があります。
相続人の一人が、固有権として生命保険金を受領した場合でも、その金額が大きすぎる場合、相続人間で著しい不公平があるとなり、特別に受けた利益を特別受益として持ち戻して修正を受けることがあります(民法第903条第1項)。生命保険金が特別受益にあたるかどうかについて、裁判所は以下のような考え方をしています。

最高裁平成16年10月29日決定も、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解するのが相当である。」旨判示して、生命保険金の受領が例外的に特別受益の対象になることがあることを認めています。
つまり、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間の不公平が、是認できないほど著しいと評価できる「特段の事情」がある場合には、生命保険金は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると判断しており、生命保険金が特別受益にあたるかどうかは、①受け取った保険金の金額、②遺産総額に対するその割合、③被相続人と保険金受取人が同居しているか否か、④保険金受取人の介護に対する貢献度などであり、これらを総合的に考慮して判断されることになっています。

(2)特別受益 

 裁判所が生命保険金の受領について、特別受益を認めたケースと否定したケースについて、紹介いたします

【特別受益に当たる例】

◎東京高裁平成17年10月27日決定

 遺産総額約1億134万円に対して、保険金の合計額が約1億129万円(遺産総額合計額の約99.9%)にもなり、同居も介護もない事案について、保険金の持ち戻しを認めた。

◎名古屋高裁平成18年3月27日決定

 遺産総額約8423万円に対して、保険金の合計額が約5154万円(遺産総額合計額の約61.1%)を占め、被相続人と受取人である妻(再婚相手)との婚姻期間などを考慮し、他の相続人との不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存するとして民法903条の類推適用により特別受益に準じて持ち戻しの対象とした。

【特別受益に当たらなかった例】

◎大阪家裁堺支部平成18年3月22付審判

 遺産総額約6964万円に対して、保険金の合計額が約430万円(遺産総額合計額の約6.1%)、保険金受取人が被相続人と同居し、また入通院の世話をしていたという事案について持ち戻しを否定した。

 以上のとおり、相続人の一人が、生命保険金の受取人として、相続としてではなく、受取人の固有の権利として生命保険金を受領した場合であっても、その金額が多額で、遺産総額との比較でも相当な割合を占める金額等である場合は、例外的に特別受益として評価されて、遺産分割において、生命保険金の受領を理由として特別受益による修正を受けることがあります。
 

3.相続放棄と生命保険金  

 被相続人に多額の借金があるなどの理由で相続放棄をした場合でも、生命保険金の受取人として指定されていた者は、相続財産と別個の固有の権利として生命保険金を受領できます。よって、相続人が相続放棄をした場合でも、生命保険金は受取人の固有の権利として受領することができます。
また、生命保険金を受領しても、相続財産の一部を受領したとして単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるということもありません。
 

4.死亡退職金

(1)被相続人が、生前の相続開始前に、既に退職金を受領して、その後に死亡した場合は、その退職金は既に、相続開始時には被相続人の現預金になっているので、被相続人の相続財産に含まれます。

(2)退職前に死亡して、相続開始後に遺族に支払われる死亡退職金は、就業規則等で受取人が定められており、その受取人の固有の財産であるので、相続財産に含まれず、遺産分割の対象になりません。しかし、このような規定がない場合は相続財産となるかどうかは判例が分かれるため、支給額や支給の経緯などを考慮した上で個別に判断する必要があります。
 

5.生命保険金と税金関係                                    

 生命保険金は、相続財産そのものでなく、固有権ですが、相続税法上は、生命保険金、死亡退職金とも、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になります。
 

6.まとめ

 以上のように、相続における生命保険金や死亡退職金の取り扱いは、具体的な事情によって結論が変わります。金額の大きさによっては共同相続人の利害に大きく関わる重要な問題ですので、まずは弁護士にご相談されることをお勧め致します。

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筆者紹介

柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。

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